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善意を装った「隠れ化学恐怖症」患者の声(化学物質ホラー話を斬る、その3)

ジョン・エムズリー ———- ロンドン大学化学科の教授。テレビの科学番組製作や、コラムニストとして科学の啓発普及に活躍。2003年にドイツ化学会著作者賞を受賞など多数の受賞あり。以下、彼の世界的なベストセラーになった書籍の抜粋を紹介する。太字だけでも読んでみて欲しい! 抜粋のため前後に記述の実証データや研究は割愛していることご容赦、ピンときた人はぜひ原本の購読をオススメする。 ———-

主張に真実はあるが、ほんのわずかに過ぎない…

善意を装った「隠れ化学恐怖症」患者の声は、以上をよく心して聞こう。 彼らの「反・化学物質」運動は1970年代までなら信用されなかったのに今や法律を変える国さえ現れた。ヨーロッパでは100年以上も安全に使ってきた物質をふくめ、あらゆる化学物質の安全性を確認するのが産業界の義務になった。巨費が飛び、無数の実験動物が殺されて化学産業にも打撃を与えた。ムダな仕事づくりの極致だともいえる。都市に住む人は有毒成分を含む空気を吸い、健康的といえない水道水を飲み、あやしい添加物を含む加工食品を食べている…と、そういう人たちは言う。その主張にはわずかな真実はあるが、ほんのわずかにすぎない。 健康に悪くて、まだ誰も知らない長期作用があるのではないか、といつも予防線をはる、新しい物質に少しでも疑問があるなら無害だとわかるまで製造・使用しないという発想をもつ人は多いが、利便性とリスクを秤にかけてリスクを甘受してよい物質も多いことを知ってほしい。

20世紀最後の25年間に、食品添加物が人類を脅かすなどと警告する本が次々と出た。どれも試験で安全だとわかっているのに、長期作用を調べた結果はないから全て禁止せよという。ではこういったことはどう考える?

嫌いな合成添加物と同様、生薬の類(たぐい)を試験した結果、コンフリーなどのハーブ類は禁止され、多くの民間療法や漢方薬に警告が出された。大量のコーヒーとかバーベキューの肉、フライ食品の危険性もわかっている。

ありふれた合成着色料は、ヒトの免疫系を強め、侵入した病原体を攻撃して病気を防いでくれるかもしれない。その可能性は、着色料が免疫力を弱め、病気を起こすという理論と同じくらいありうる。例えばある添加物をネズミに試したら発がん率が下がった(むろんメディアには載らなかった)。悪役だとみる人の多いCLAなどのトランス脂肪も、乳がんを抑えているかもしれない。

有罪証明を出すべき

もちろん、何かが完璧に安全だと証明する手段はない。それは被告が自分の無罪を証明することと同じだ。文明社会で有罪を証明する義務は原告の側にある。しかし感情が理性を押さえこめば逆の姿勢になってしまう、中世の魔女狩りがまさにそうだった。 ではどうすればいい? まずは誰かが「あぶない」と叫んだ「化学物質」が悪いと考えるのはやめ、叫んだ人に有罪証明を要求すること。かつて多くの有用物質に罪を負わせた「憶測」はやめよう。ある「化学物質」を禁止させたいなら、しっかりとした科学的根拠にもとづく理詰めの推論が最低線になる。高齢者のアルツハイマー病を押さえる「化学物質」を私たちは追放してしまったのかもしれない。それがありそうにないなら、何十年も安全に使ってきた物質が未知の危険を秘めているということもありそうにない。

化学不信者や化学恐怖症患者はあらゆる化学物質を脅威とみて、隠れた危険だらけの世界にいると感じ、わずか1個の人口分子が心臓病やがんを起こすと思うのだろう。そしてなによりこの25年、化学の歩みをはばむ展開があった。それは巨大なメディアがひたすらニュースを求める姿勢である。そんな話を活動団体(反・化学産業)が使うせいで市民の心に脅えが生まれた。たぶん、あまりにも急激に進む科学はそんは反応を受ける。同じことが原子力産業でおき、バイオ産業で起きている。 「化学物質」が健康をおびやかしていないことをハッキリと書いておきたい。

———- 以上、ジョンエムズリー著『「化学物質」恵みと誤解』、からの一部抜粋でした

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