マイナスイオンの科学
この家電製品によく見られる「マイナスイオン」とは何だ? 大気中の普通の状態では存在し得ないイオン。多くの家電製品はそれをどうやって出しているのだろう?その方法は現在のところ大きくわけて3通りあることが分かった。
1、水破砕式 「水を細かく砕く時にマイナスイオンが発生する」という考え方に基づいている。1世紀以上前にレナードという科学者が「滝壺の周りには、マイナスイオンが多い」という論文を発表していて、これが根拠となっている。できあがるのは水滴に負の荷電を持つ分子が付着したもの(らしい)。 水槽の水を微粒子状にして飛ばすので、水がレジオネラ菌などの病原菌に侵されでもしたらそのまま病気をふりまくことに!そのため家電メーカーは採用しにくいようだ。 2、コロナ放電式 二つの導体の間に高電圧をかけると間の空気中にある酸素や窒素などの分子が負に帯電する。この原理を使ってマイナスイオンを発生させる方法だ。ただ、これも欠点があって同時にオゾンや二酸化窒素などもできてしまう。ドライヤーや空気清浄機はこの方式が多いようだ。付随的に生成されてしまうオゾンはいわゆる「活性酸素」であり有害物質ですが強い殺菌力もある。なので最近は「マイナスイオンもオゾンも発生させる!」とうたった商品も多く見られる。本来有害物質であるものを「効果」としてアピールしてしまうのですから商魂逞しいというかなんというか。上の画像の「浮遊ウィルスも不活性化!」てところがその商魂から生まれたコピーなわけだ(笑) 3、放射線式 放射性物質から放射線を空気中に放射させてそのエネルギーで酸素などの分子をマイナスイオンにする。「マイナスイオンを出す服」などはこの方式でなんと繊維に放射性物質を折り込んでいるとか。要するに、「放射線を出す服」。そう聞くと、これまたイメージはよろしくない(^^; また、トルマリンを使ってマイナスイオンを発生させる商品も人気のようだが、これはどうやらインチキのようだ。
あやしさ満点の科学?
「森林ではマイナスイオン○○個/cc都市部よりもずっと多い」なんて表現をよくみかけるが、実体がわからないものを測定するってどうなの?そして実は、というかやはり測定方法に関しても統一した規格がない。 さらに! 直接マイナスイオンの個数を測っているわけではなくて、測定しているのはその空気中の「電気の通りやすさ」(電気伝導度)。電気が通りやすいほどイオンが多いと言っているわけだ。確かに電気が通りやすかったらイオンが多い「らしい」とは言える。 でも、そもそも水は電気が通りやすい物質の代表格。というわけで、マイナスイオン発生加湿器にその手の測定装置を近付けると大量のマイナスイオンを発生していることになるのはあたりまえ!だって大量に水分があるんだから。もちろん、滝やシャワーの周りで測定しても大きな値が出る、そりゃそうだ。 うーん、「実体はわからない」「測定方法もよくわからない」となると急にマイナスイオンが怪しく思えてくる(^^; 一方でマイナスイオンの生体への効果の研究をきちんと行っている研究者も存在し、「マイナスイオンが効果あり」という報告もある。例えば、「ストレスが抑制された」「作業効率が上がった」などなど。でも、やっぱりいずれも「どのようにして効くのか、メカニズムは不明」なんです。そう、科学のニセモノとホンモノの境界線はまだまだ曖昧なのだ…。
信じるものは救われる!?
でも!何らかの効果はありそうな。。。 現在のところ、マイナスイオンの周辺は商売先行で「アヤシサ満点」の科学だが、一般的に「エセ科学」と「本物の科学」の境目は見えにくい場合が多いもの。これまでも、怪しいと言って退けられていたものが実は重大な発見だった、という例は多々あるそうだ。きちんとした検証なしに「エセ科学だ!」と切って捨てるのもこれまた非科学的な行為だとの考えがある。 今後、きちんとした研究次第でこのマイナスイオンも「大発見」につながるかも!逆に、「森林で気持ちが良いのはマイナスイオンが原因じゃありませんでした」ということになるかもしれない。 マイナスイオン効果があるというドライヤーは「ひょっとして髪がしっとりしてる?」、エアコンは「ひょっとして空気が清々しい?」てな風に信じてた方が幸せでいられるかも。信じるものは救われる~(笑)
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